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現役ジャーナリス集団が新型メディアを目指す

【番外】マスコミ内情 給与・就活・勤務

30年前

記者「私、〇〇新聞の記者なんです」

学生「へーすごいですね」

現在

記者「私、〇〇新聞の記者なんです」

学生「へー大変そうですね(さげすんだ目)」

読者の方からマスコミ内部のこと、日本のジャーナリズムについての記事が見たいというお声がありました。最近、ちょうど採用にかかわる仕事もしたので、書いてみます。

 

 ❒マスコミ希望者の減少❒

f:id:uncensorednewz:20181124193318j:plainいつの時代もどこの業界でも「最近の若いやつは使えない」「新人が根性がない」と言われてきたので、「ゆとり世代は使えない」みたいなことを言う上司には「おまえもそうだったろう」と言えばいいのですが。
マスコミ業界では新人社員・若手社員の絶対的な質が落ちています。私見ではなく、客観的事実としてこの20年くらいで倍率は全社5倍から10倍、つまり100倍以上あった倍率が20倍から10倍に低下しました。少子化を考慮しても極端な低下です。少なくとも30年くらい前(90年代)までは就職活動で新聞社やテレビ局、出版社などマスコミは高収入でカッコイイ仕事で漠然と1番人気だった・・・・・・か、どうかはわかりませんが、単純に人気倍率から見た内定獲得ゲームでは最難関職種だったのは間違いありません。大学で大手マスコミに内定が出た学生はゼミやサークルで鼻高々でした。しかし、21世紀を迎えた今、マスコミは業界は内定獲得ゲームの中では明らかに2番手に落ちました。体感的にはもう3番手4番手のような気もします。
最近の若いもんが優秀で無いのではなくて、最近マスコミなんかを目指す若いもんはもう就活市場の「上積み」層ではないのです。

 

❒人事が謝罪と説明に回った会社❒f:id:uncensorednewz:20181124201636j:plain

数年前、ある大手の新聞社であまりに内定者の質が悪かったため、各部署に配属される前に人事部が謝罪と説明をして回るという事件がありました。
エントリーシートや筆記試験、面接などで人選を誤ったということではありませんでした。そもそも希望者全体の質が極端に低かったのです。さらに、内々定からしばらくするとその上積み層は他社から内定が出たと、内定辞退してきました。慌てた人事担当者は「どこの新聞社に行くのか?テレビ局か?給料や福利厚生がいいのか?勤務地がいいのか?」―何とか食い止めようと説得しようとしましたが、実は他の新聞社やテレビ局などマスコミ業界に流れたのではなく、そもそも全く違う業界ばかりだったそうです。マスコミ業界はほかの業界より少し内定が出るのが早い傾向があり、内々定者は「滑り止め」「練習」として新聞社を受験していたのでした。

40代から50代の人事担当者の昔の感覚ではマスコミに内定は圧倒的勝利で就活ゴールでした。朝日新聞か読売新聞、いやこれからはテレビの時代か?など悩む新人の獲得戦争はあったものの、他業種に流れることなど思いもしていませんでした。

結果、あわてて繰り上げ内定させざるをえなくなり極端に質の低い1年生が入社してきました。そこで人事部は各部署や地方支局を回って「春から配属される新人はポテンシャルが低い。過去の若手と同じように期待して厳しく指導してもそれはハナから無理。やさしく丁寧に接して、できなくても叱らずにほめて伸ばしてほしい」と説明して回ったのです。

 

 ❒人気低下の理由❒

給与水準

新聞社やテレビ局、出版社内では実は給与格差はかなりあって、最ももらっている民放の記者と給与水準の低い一部新聞社では本当に倍以上の格差があります。なんとなく入って10年、20代から30代くらいの報道記者の年収幅(額面)はこんな感じです。

大手テレビ局     1000万~1500万

地方テレビ局       700万~1000万

全国紙(上位)   800万~1000万

全国紙(下位)   500万~700万

時事・共同     500万~1000万

地方紙                500万~800万

スポーツ紙     500万~800万

専門紙       400万~600万

大手出版社     800万円~1200万

残業代が大きな幅を占める会社は内勤と外勤で社内でも大きな差があります。また、家賃補助やローン支援など福利厚生もありますし、出版社は領収書を請求し放題だったり一概に年収の多寡で語れない部分もあります。業界内格差はあれど、総じて高収入であるのは間違いないです。

激務度(MAX100)

テレビ局      90~100

地方テレビ局    50~80

全国紙       50~100

時事・共同     50~100

地方紙    30~70

スポーツ紙  80~100

専門紙    30~50

大手出版社       30~100

民放は圧倒的に人数が少なくで常にフル稼働です。給与水準でなんとかもっているものの耐えきれない人や体を壊す人も多く報道やバラエティから総務や人事に異動する人も。新聞社は社会部の警視庁担当や政治部の与党担当など民放と同じぐらい忙しいところもありますが、省庁担当や経済担当はもう少し落ち着いて好きなことを取材する印象です。とはいえ省庁で大きな不祥事があったり、大企業が倒産すれば寝る間もなく働きます。地方紙は人数は少ないですが政治や経済の大きなニュースは通信社の配信に頼り、落ち着いて地域の出来事を取材する印象です。大手出版社は大御所の小説家の先生とじっくり付き合う部署もあれば、事件現場や芸能人のスキャンダルを追いかけられる週刊誌部署もありまちまちです。しかし、体感的には出勤場所も出勤時間もフリーでちょっと出かけても「取材」という言い訳が立ちます。待つ時間やうだうだしている時間も長いので「実働」はほかの業界の方のほうが長いような気がします。

勤務地・異動・転勤

大手テレビ局 転勤なし 職種異動あり

地方テレビ局 転勤なし 職種異動あり

全国紙全社  全国転勤 職種異動なし 

時事・共同  全国転勤 職種異動なし

地方紙    転勤なし 職種異動なし        

スポーツ紙  転勤なし 職種異動なし

専門紙    転勤なし 職種異動なし

大手出版社  転勤なし 担当異動あり

民放テレビ局は職種が変わります。報道記者が急にコマーシャル担当の営業に行ったり、総務に行ったり、バラエティーに行ったりという異動があります。新聞社は職種は変わりませんが全国津々浦々を転勤します。出版社は担当する雑誌の異動などがあります。写真週刊誌で芸能人の不倫を追いかけていた人がマンガ雑誌の担当になったりして「転職したみたい」な体験をします。

なぜ人気がないか総論

各社の採用担当者とちょっと話す機会があったのですが、やはり激務がいやだというのが一番の理由のようです。あとは緊急呼び出しがあるというのも心が落ち着かなくて嫌な若い人は多いようです。心の負担ということでいえば、新聞やテレビは毎日時間制限が課せられている中で公に発信するというのも胃が痛くなる仕事です。事件現場に行ったり、嫌がる人を追いかけまわしたりするという点では仕事そのものがストレスフルでもあります。また大手新聞社や通信社は入社後数年間の地方勤務が圧倒的不人気の理由のようです。

  ❒価値観の変化に気づいていない❒f:id:uncensorednewz:20181124201712j:plain40代から50代のマスコミの中枢を担う世代は、取材や報道ができることは快感であり、意義があるということに一点の疑念も持っていません。だから「こんな素晴らしい仕事ができるんだぞ」式の勧誘しかできていません。

しかし、若い世代からしてみればこれだけネットにニュースがあふれる中でそれが大手新聞社のニュースなのか通信社のニュースなのか週刊誌が一報だったのかなんていうことはわかりません。「このハゲー」はYoutubeやTwitterで流れてくるふわふわとした情報源からのものであり、マスコミの記者がその録音テープを必死で入手して議員に聞いたとか裏どりをしたとかいうことは知ったことではないのではないかと思います。まして、お国が働き方改革を進め、プライベートを大切にする価値観が強まっている中で激務でストレスフルな仕事にやりがいを見出せというのが無理な話だと思います。

 

❒でも、楽しい❒f:id:uncensorednewz:20181124201021j:plain

マスコミの取材は発信に注目されがちです。しかし、ものすごくジコチュー、身勝手な話ですが実は取材こそ面白いことです。私たちが人間に生まれていろんな場所でいろんな種類の多くのものを見たり聞いたりして感動したり怒ったり悲しんだりするということが人生経験だとするならば、記者という仕事はまさにそれを続けていくことです。オフィシャル野次馬権ともいうべきものを渡された記者たちは名刺ひとつで誰でも会うことができます。事件現場で思いがけない真実に出会ったり、政治が変わる歴史的主観に立ち会ったり、著名な作家と酒を飲んだり。そういう衝撃体験をできるという意味ではアトラクション的にワガママに報道の仕事を選ぶのはありだと思います。

 

そしてそういう体験の一部しか発信できないことを歯がゆく思った記者たちがこのサイトを立ち上げました。もっといろんなことをお伝えできるように頑張ります。