【外信部】アメリカ 米中間選挙報道を検証する
アメリカの中間選挙、日本でも注目が集まりました。
日本がアメリカの属国であるとか、安倍政権はドナルドトランプに頭が上がらないという密度の濃い議論はさておき、なんでよその国の選挙を日本中のマスコミが報道するのかという素朴な疑問に誰も答えないまま報道が過熱した真相を探ってみます。
❒基礎知識❒
https://www.visitthecapitol.gov/about-congress
どういう選挙なのか
2年に1度、下院(日本の衆議院に相当)の全議席と上院(日本の参議院に相当)の3分の1が改選される選挙。大統領の任期4年のちょうど真ん中の2年目にあたるので中間選挙と呼ばれています。大統領自体は変えられませんが現政権に対する折り返し地点での審判の意味合いを持ちます。
個別議員の勝敗より総合的な議席数に注目。
大統領の所属ずる政党が多くの議席を取れば、大統領の政権運営にもおおむね指示があることの証明になります。逆に大統領の所属する政党が負ければそれは大統領への不支持を意味します。今回の中間選挙では下院でわずかに民主党が過半数を占め、トランプ大統領に「あんま調子のんなよ」というメッセージを送りました。
オッサン、われ関せずの模様。
❒2大政党制❒
前回は赤組が大勝
アメリカは2大政党が入れ替わり立ち替わり政権を握る構造になっています。右や左に触れると高級官僚たちの出世や異動にも影響し、国の目指す方向性がガラリと変わります。
共和党―保守政党(日本の自民党的な)
最近:トランプ大統領 ブッシュ大統領
支持層にものすごくザックリとハッシュタグを付けると
#白人 #大企業 #伝統的富裕層 #軍隊 #右翼 #戦闘機 #ガテン系産業 #マイノリティ認めない #LGBT嫌い #政治解決より戦争 #マッチョ #ヒマがあれば筋トレ #伝統を守る #カントリーミュージック
民主党―革新政党(日本の民主党的な)
最近の大統領:オバマ大統領 クリントン大統領
支持層にものすごくザックリとハッシュタグを付けると
#黒人やヒスパニック #左翼 #貧困層 #反戦 #知的職業 #マイノリティ #LGBT認めよう #メガネ #スポーツより読書 #高学歴 #We are the world #ロック
アメリカで人気のアニメ、「サウスパーク」が2004年の大統領選挙に合わせて制作したエピソード「Douche and Turd(バカとアホ)」はアメリカの2大政党を批判した作品として知られています。
主人公たちの小学校のマスコットキャラクターの選挙で
「Douche(浣腸器具)=俗語でバカの意味」
「Turd Sandwitch=(アホなサンドイッチ)」
のどちらかを選ばなくてはいけなくなります。
主人公はあまりのくだらなさに校内選挙の投票を拒否しますが、最後は「バカかアホしかいなくても投票することに意味があるんだ」という説得に応じて投票します。(結果、主人公の一票は全く届かずという悲しい結末)
共和党と民主党もどっちも一長一短の政策で、アメリカ人はうんざりしながらも選挙になると盛り上がり、しばらくすると盛り下がるという無限ループを繰り返します。
「議論することが民主主義」という点では正解かもしれません。
❒日本のマスコミがやる理由って❒
本題です。
アメリカのメディアが自国の選挙で熱狂するのは分かりますが、なぜ日本のメディアも中間選挙に熱狂するのでしょうか。ちなみにアメリカでは日本の衆議院選や参議院選はおろか、首相が誰に決まったかもほとんど報道されません(米在住者証言)。
実際、ほとんど日本に影響がないのが実態で、各社日本への影響については「株価が変動するかも」という話ばかりでした。要するに日本で報道する意義については最初からどこかに放り投げた状態で「いや、まあ、やるっしょ」みたいな空気感で報道が進んでいました。
新聞は有識者に、テレビ局は街頭のサラリーマンに突撃インタビューをしてさも日本中が興味があるかのように演出しています。
マスコミ内部の人間から見てもあまりよく分かりません。外信部の特派員や政治部の記者となんとなく話をしてみたところ「毎回、力入れてるし、他社もやってるから」くらいの認識しかありません。
が、これがことの本質では無いかと思います。
社内的プレゼンスを示したいというのと、マスコミ全体のお祭りムードのため、「報道するのがあたりまえ」という前段無視の状況が作り出されているのです。どうせ人と費用をかけて取材するんだから「すごい話があるよ」と社内、社外に騒ぎたいだけ。本当にこれにつきてしまいます。
❒日本シリーズを見る阪神ファン❒
このブログの冒頭でも気軽に「日本でも注目が集まりました」とコメントしていました。さらりと読まれた方が多かったかもしれません。しかし、体感的にはほとんどの日本の人たちはマスコミが騒ぐから「流し見」はしたかもしれませんが「注目」まではしていなかったのではないでしょうか。
ただ単純に赤組と青組が試合をするよとずいぶん前から煽られて→どっちが勝つかなという意味では注目していたかもしれません。
プロ野球日本シリーズの広島カープVSソフトバンクの決勝を阪神ファンが見るみたいな感じで見た方が多かったのではないでしょうか。
「興味ないねんけどどっちが勝ったか気になるやん」
マスコミはそんなことに気づいているのかいないのか。
すごくいっぱいがんばって報道したからすごくいっぱい興味を持ってもらったはずだみたいな盛大な論理破綻をもろともせず特派員や政治部のデスクが速報や関連記事を執筆しました。
そして新橋の居酒屋で「いやー中間選挙は注目が集まったなあ」と言いながら居酒屋で選挙の打ち上げをしています。